2022年1月28日に公正取引員会から「新規株式公開(IPO)時の価格決定を巡る報告書」というものが出されました。
(令和4年1月28日)新規株式公開(IPO)における公開価格設定プロセス等に関する実態把握について
上記ページに今回の報告書のPDFがあります。
内容的にはニュースの見出しに出ているような「IPOディスカウントに関して独占禁止法違反」とは言わず、「価格設定に対してもっと柔軟に決めるプロセスを用意しないと独占禁止法違反の恐れ」もある程度で、IPOの公開価格設定が安すぎると言及するものではないと取れます。
そして、これらの調査を元に関係各所に働きかけると締めており、IPO業界的にはこの後「日本証券業協会」あたりから新しいルールを定めるという「自主規制」的な内容が出てきそうです。「日本証券業協会」のIPOルールといえば、昔は個人投資家への公平な配分に向かってルール作りをしましたが、結局10%は公平な抽選配分にするという、非常に低い数字のルールを付けて骨抜きのルールになっているのも知っている人も多いでしょう(今でも裁量配分が色濃い)
なお、公正取引委員会では独占禁止法違反に対して3つの要点を挙げています。
- 主幹事とVCなどの影響力行使で主幹事請負の独占
- 引受価格の証券会社間での料率を競争していない
- 主幹事による公開価格の一方的に低く設定していないか?
正直、引受数が多い野村證券は結構高い値付けをしていると感じる部分があります。逆にみずほ証券とかは値付けを安くして上場を成功させるイメージですね。VCの影響力は目立たないけどあるでしょうね。とにかく証券会社業界に自主規制というかルール作りして公平性を持たせろという内容ですね。
来月中には「日本証券業協会からワーキンググループの報告書」が出されるでしょう。そこに新しいルールが明記される可能性があります。現在のところ変化として有りそうなのが
- 仮条件の拡大(もしくは仮条件を逸脱した価格まで公開価格を決定できる)
- 上場の承認から上場日までの短縮(1週間程度)
- 市場を鑑みて上場日の変更を可能に(相場変動リスク対応)
- 証券会社と上場会社の丁寧な説明を求める?
感触としては「仮条件の幅の拡大で公開価格が需給に合わせて必然的にやや高くなる」「上場までのプロセスが短く、また変更もスムーズに」といった流れになりそうと感じました。
仮条件の上限がやや高く設定される可能性を踏まえると、「初値>公開価格」の魅力はやや薄れる傾向にはなりそうです。ただ、これによって上場する会社が増えて件数は多く、利益は小幅だけど参戦しやすくなるといった環境になればというところでしょうか?
それにしても公正取引委員会は「不当に高い公開価格のIPOをお付き合いの名目で証券会社が投資家に高く売りつけている事例はないか?」というのは考えないのでしょうかね?これを防ぐにはもっと裁量配分とかを減らして、お付き合いで顧客が優遇される証券会社の体制見直しのほうが、独占禁止法違反的な状況を防ぐことになりそうな気もしますが・・・。
主幹事の誠意価格(引受価格)だったりそれを割り込んでスタートするIPOがたくさんある状況のほうが独占禁止法的にも異常だと思いますね。