2022年8月24日に東京証券取引所から「IPO等に関する見直しの方針について」というタイトルでIPOに関する情報がリリースされました。IPOに関する変更ですので紹介したいと思います。
こういう見直しが進んで、IPOがスムーズに、そして多くの方(上場会社・取引所や証券会社・投資家)が恩恵を受けられるような形になって欲しいですね。
結構、多岐にわたる内容が書かれていましたので一つずつ追ってみたいと思います。
1.ディープテック企業に関する上場審査
1つ目はディープテックに分類される「宇宙・素材・バイオ・ロボ」などあまりに新技術過ぎて現時点での企業価値と将来の企業価値の評価が困難なものについてです。取引所として上場承認するにあたり評価が難しいので、機関投資家(VCなど)から中長期的に投資を受けているのであれば、それらの機関投資家の評価を活用することで、ディープテック企業のIPOを円滑に行うというのが主旨ですね。
今後、ちょっと評価が不透明と思われる企業のIPOが出てくる可能性があります。こういうのは積極的に進めて欲しいところです。
2.IPOプロセス(上場日程の設定等)
これは結構大きな内容です。
1つ目は新規承認から上場日までの柔軟性が書かれています。
- 上場承認時は上場予定日をレンジ記載が可能
- 公開価格決定まで想定株価を届出書に記載しないことが可能
- 承認後に上場予定日の変更が可能
スケジュールと価格面でかなり柔軟に上場承認後に変えることが出来ます。これによって後に出てきますが、3月や12月にIPOが集中することが防げるという仕組みになっています。また想定株価を入軟性を持たせることで公開価格も上げたり下げたり出来ますね。ここ最近は想定価格と仮条件の異常な乖離も複数銘柄で見られているので、最初から柔軟に行こうという考えでしょうか?
上場予定日は過密スケジュールの中でも数字ずらしたほうが資金の集まりが良いこともありますからレンジはありでしょう。恐らく分売や公募みたいにレンジ設定するけど、殆どが予定初日に上場というパターンになるかもしれません。
3.ダイレクトリスティング
いわゆる直接上場と言われる手法ですね。グロース市場では現在、公募の実施を要件としているようです。海外のユニコーン企業などグロースで知名度高く人気がありそうな企業ならば日本でもというところでしょうか?
資料に載っていますが日本では1999年4月に杏林製薬がダイレクトリスティングで上場して以来実施されていないようです。
グロース上場での公募の実施というのを外すということをしそうですが、その場合の企業価値の要件を付けてきそうですね。これは私達としては今後グロース市場にダイレクトリスティングで上場できるようになったとしても、出てきた企業次第ですね。
4.引受証券会社の新規参入
これは、あれですかね。今までの大手証券会社だけ、大手監査法人だけではIPO業務がうまく進まなくなってきているということでしょうか?今後も旧来のIPO主幹事以外にも頑張って欲しいところですが、そういうところのIPOって初値結果が伴わなかったり、上場後いまいち伸びないというのをよく見ているのでなんとも言えないです。
5.スピンオフを行う場合の当事会社の新規上場
スピンオフ上場では最近はコシダカからスピンオフしたカーブスがありました。
カーブスの上場はコロナ禍という特殊な状況でしたが、IPOのスタイルは色々あったほうが面白いと思います。少なくとも適正なIPOプレミアムディスカウントがあって参加者に受益がある形であれば嬉しいですね。
その他では「SPAC」「グロース市場におけるM&A」「地域発企業のIPO」「海外クロスボーダー企業のIPO」「特定投資家」「初値形成」「入札制度」などいろいろ検討してますよと書かれています。
今までも話題になっていた「公開価格」についても最後の方につらつら書かれています・・・。なんだか、諸外国の上場市場に比べて日本のIPOは規模が小さく起業家にとって魅力が薄い問題、証券業界にもっと競争を促して公開価格を吊り上げたい意志が見えていますね。
IPOファンからすると、最近は公募割れも多いし、何よりも上場後数年経ったら初値割れはもちろん、公開価格割れもたくさんある状況が今の日本の取引所です。
【IPO結果一覧】上昇率、損益、その後の値動きなどチェックに(分析版)
データで見るとIPO初値(プライマリー)プレミアムと、上場日から数日の流動性の高い時のマネーゲームぐらいしか魅力がない状態というのが問題だと思いますので、中長期ベースでの上場会社としての魅力をアピールするなら公開価格が高すぎるのは、投資家が相手にしないことになり、ますますIPO市場は盛り上がらなくなると思うのは私だけでしょうか?