「終わりよければ全てよし。」そんな言葉を象徴するような2019年のIPOだったかもしれません。2019年のIPOを少し振り返ってみたいと思います。

当方は2000年~のIPOデータをまとめて公開していますので、ご自身の視点で振り返ってみると面白いものが見つかる可能性もありますので参考にしてください。

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【IPOサマリー】2001年以降のIPO情報を一覧、グラフ表示

まず2019年のIPO全体を過去のIPOと比較してグラフで見てみると、実は平均騰落率も件数も少し下がり基調です。騰落率に関しては2017年をトップに徐々に落ちていますし、件数も下がり気味なのでIPO相場は年単位で見ると落ち着きを見せている状態です。

もし12月のIPOの結果が奮わなかったら、もっと沈んだ印象の結果になっていたかも知れませんね。

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【IPO年度別結果まとめ】全体成績、月別・上場市場・主幹事証券・業種別傾向確認

勝率は約85%でいつものIPOらしさを維持しています。まだまだ公募取得初値売りで十分利益が出る状態です。

最高騰落率はウィルズ(みずほ証券主幹事)でなんと4.7倍程度でした。12月に上場した「プレミアム優待倶楽部」でもおなじみの銘柄です。一方、1枚あたりの最高利益をはじき出したのはサーバーワークス(大和証券主幹事)です。1撃約130万円プラスというIPOになっています。

一方、データ上で厳しい結果だったと評価されているのは大英産業(エイチ・エス証券主幹事)ですね。不動産セクターで公募割れの後、さらに下げています。

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月別の結果を見ると吸収金額が一番多い12月に勝率91.3%で平均騰落率も200%と近くと、12月の頑張りが支えた2019年のIPOだったとデータを見ても感じられます。振り返ってみると吸収金額1000億を超すような超大型IPOがなかった年でもありました。

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上場市場別では今年は東証2部の銘柄が頑張った印象がありましたが、結果を見てもよくやっていると思います。公募割れは1銘柄のみで平均騰落率もそれなりに結果が出ています。今後は東証2部も程よく評価しても良いかも知れません。

初値結果だけ見るとリートIPOはやはり不利ですね。

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主幹事別傾向も面白い結果かもしれません。先程は銘柄で目立った主幹事として大和証券とみずほ証券が出ましたが、全体的な件数や吸収金額での取扱量ではSMBC日興証券と大和証券が頑張った結果になりました。王者野村證券は去年のソフトバンクの影響でしょうか?やや少ない状況です。

お世話になる確率が高かったのはやはり大和証券とSMBC日興証券だったかも知れません。

SMBC日興証券がダイレクト口座にステージ制傾斜配分を導入しているように、総合証券のネット部門でも金持ち優遇、お得意様優遇の流れが出てきていると感じます。

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最後にセクター別の情報。多いのはネット系の情報通信業、そしてサービス業ですね。AIなどテーマ性の高い銘柄は注目度も集まって高騰傾向は同じです。また地味系が初値では苦しい無という傾向も変わりないですね。不動産セクターの勝率が低く出ています。

2019年の途中では「連続赤字でのファンドのイグジット案件」に関して不当に高い価格で市場参加者に買わせているといったIPOへの不信記事も出ていましたが、12月のIPOでそういったものを少し吹き飛ばしています。

微妙案件の取捨選択は今後も悩みのタネとなりそうですが、2019年を総合的に振り返ってみても、参加姿勢を貫いたほうが結果的にプラスになりやすい相場環境は続いていると思います。

私は2008~2011年あたりの冬の時代もIPOも見ていますので、そういった5年スパンでIPOが全く冴えないことも想定しながら続けています。それを考えれば2019年は十分結果が出た年でした。

2020年はオリンピックイヤーで、まだ上場は盛り上がると思いますが、予てから2020年が最大の山場(ピークになりやすい)と言われていました。オリンピックイヤーまでに上場したい企業の意向は多く、監査法人は受付を停止するほどの上場意欲の強さだったと思います。

最近はクラウドファンディングなど、上場以外に資金調達する方法も増えており、東証だけでない市場の自由度の広がりも増えていくかも知れません。IPO予備軍はたくさんあると言われていますので、年末年始の雑誌に出てくるようなものも含めて上場予備軍や上場観測企業もしっかりチェックしておきたいと思います。

【IPO上場観測リスト】今後上場が予測される企業のリストと動向